読書:大野英二郎『停滞の帝国』

分厚い本でした…。

停滞の帝国: 近代西洋における中国像の変遷 

停滞の帝国: 近代西洋における中国像の変遷 

へー、とおもった指摘は、最初のところで、マカートニー使節団の報告者がもたらされる前から、中国への蔑視感情がヨーロッパで一般的になりつつあった、ということです。
宣教師の報告は、異常なまでに中国礼賛であることは、前々から指摘されていることで、それはそれでなんでなのか興味深いところなのですが、そういう中国へのポジティブなイメージは、従来はマカートニー使節団メンバーの各種著作によって覆されたとされてきました。
しかし、本書では、細かい(引用おおすぎ!)によって、もう少し前から中国認識がネガティブなものになっていくことを指摘しています。
とはいえ、なんで18世紀末に対中感情が悪化していくのかはよくわからないわけで。18世紀末といえば、村尾進先生も指摘してますが、カントンあたりで、イギリス人が中国人に憎悪をあらわにしていく時期なわけなんですが、一方で、中国側でも清朝の経済的絶頂に当たり、中国側の態度が尊大になっていたと指摘されています(吉田金一)。なんでしょう、中国が経済的に好調で、それがあまり中国と取引する国々に(おもったほど)利益をもたらさない、とか、そういうことなんかな。別に近隣窮乏策をとってるわけじゃないんですが。

この本、対象は、19世紀から20世紀前半なので、マカートニーの話は前座です。しかし、まじ長いよ…。