読書:檀上寛『天下と天朝の中国』

天下と天朝の中国史 (岩波新書)

天下と天朝の中国史 (岩波新書)

読みました。
読後感は、「うーん・・・」でした。
やっぱりねえ、思想で通史は無理なんだと思うんですよ。
もちろん、政治史的な形では結構面白いんですよ。洪武帝の「恐怖政治」の論理とか(203‐205頁)。でも、「天朝」と「天下」はあんまり関係ない気がするんですよね。

「歴史的に貫徹する中国人の心性」みたいな話になると、いやそりゃないだろう、と。だって、日本人に歴史的に貫徹する心性なんてあります?ないよ。「和をもって貴しとなす」とか?そもそもこういうこと書いてる時点で、「当時は和が尊ばれてないんだなあ、空気よむやついなかったんだろな」としか思われんではないですか。

個別で気になる点としては「中国」=「中原」になってるあたりで、遼がイメージしてる「中国」は具体的に唐なんじゃないかな、とか(152頁)。「中華帝国の外被」というのも、漢地・漢文向けでそれ以上でもそれ以下でもないんじゃないかな、とか(170頁、232頁)。むしろ「大元(ダイオン)」を国号にしてる点は、「漢地」の論理に対する挑戦なんじゃね、とも思います。

ちょっと笑ったのは、袁世凱は「自分の欲望のままに行動する掛け値なしの権力亡者であった(267頁)」っつうとこでした。孫文もなかなか革命亡者だと思いますけど、そっちはいいんですか。いいんかな。