短絡する歴史

またこの手の本かあ…

1493――世界を変えた大陸間の「交換」

1493――世界を変えた大陸間の「交換」

こちらの続編になりますね。

1491―先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見

1491―先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見

で、その『1493』の紹介文がこちらなんですが…。
http://toyokeizai.net/articles/-/109042?page=3

いやまあ、いつものグローバルヒストリーものなのですが、一点だけ。

中国には堰を切ったように新たなものが流れ込んできたが、その先陣を切ったのはタバコであり、タバコの中毒性は多くの人を虜にした。それ以降、サツマイモ、トウモロコシ、ピーナツやトウガラシなどが続々と中国に入ってきて、中国の食卓と農村の風景は瞬く間に変わってしまった。明から清へと中国の覇権が移行していったのは、まさにそんなタイミングだった。

清は明の残存勢力や海賊の補給路を絶つために、沿岸地域に住む人々を内陸部へと強制移住させた。この強制移住は人々を北や西へ、ついにはそれまでは住む者のいなかったような高地へと追いやり、彼らは棚民と呼ばれる存在となった。そのような急峻な高地ではコメをつくることなどできるはずもなく、棚民はアメリカ大陸から持ち込まれたトウモロコシ、タバコ、サツマイモに頼るようになっていく。

ここのダウトは二つ。(もちろん問題は該当書籍にあるのであって紹介した人が悪いのではありません)
1:新大陸産作物の栽培が東アジアで一般化するのは18世紀に入ってからで、それは人口増に対応するためなので、順序としては逆。むしろ、当初はトウモロコシとか全然栽培されないからね。トウガラシもコショウの代替品だし。やっぱ東アジアの人は米が好きなのよ。
2:遷界令で出た難民が、内陸に移住させられたって、元ネタなんだろう…。棚民が問題になるのは18世紀に入ってからで、遷界令は1680年代でおしまいになってるから、時期が違う。

なんつうか、一つ一つはいいんだけど、短絡させるとちょっとヘンな話になるというヤツですな。こういうの見ると、ちゃんとしたアメリカの中国学者の仕事ってなんなんでしょうね、みんな頑張ってると思うんだけどなあ…、と、なんかむなしい気分なるっすね。まあ、シノロジーなんてマイナーの極致ですからな。

グローバル経済の誕生: 貿易が作り変えたこの世界 (単行本)

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海と帝国 (全集 中国の歴史)

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