たぬき丸焼けの顛末(2)
さきほどの記事の続きです。
そういえば、自分でツイッターアカウントを使ってもいいのかもしれませんが、わざわざナルト(@)を投げつけて、文句をつける気にはなりませんし、以前書いたように、“議論”をしたいわけではないのんですよね…。
あ、これ、むしろ『翻訳の政治学』を地でいってるんじゃね?
さてさて。
@jyonaha 丁寧なご返答ありがとうございます。TWにあれこれ突っ込まれても、というのはご尤もと思います。ただ、繰り返しになりますが問題は池田氏のあのブログ記事です。「明清」とは明示してないものの西洋の近代化との対比で「停滞」論を持ち出す以上そう捉えられても仕方ないかと。
— KAJITANI Kaiさん (@kaikaji) 4月 11, 2012
さっきので終わりかなー、と思っていたら、梶谷先生は、もう少し議論をしてくださいました。これは、池田さんのブログ記事が、というよりも、おそらく紹介された元の本のほうに言いたいことがあったのでは、と推察します。というか、自分のほうも、まさかあのProf. R. Bin Wong(王國斌教授)があんなテッキトーなことを書いてるとは思えませんでした。当初は違うWong(どこの黄さん?)くらいな感じでした…。
@jyonaha あと「西洋は軍事費に税収を費やしたが王朝中国はインフラ建設に」という記述もミスリーディング。岩井先生の本にも王朝中国では正規の財政規模全体の6〜7割を軍事支出が占めたとあります。たぬき氏の批判もむしろ主眼はブログ記事の内容に向けられていたものと私は理解しました。
— KAJITANI Kaiさん (@kaikaji) 4月 11, 2012
そうなんですよね。明でも、清でも、インフラ整備して、それが経済発展でしたよ、って、しかも大分岐論を肯定しつつ、って意味わかんない、と思っていたわけです。少なくとも中央レベルでは、明代は長城に兵士展開しっぱなしだし、清代も八旗を食わせにゃならんし、インフラに出す金はない(大運河と治水を除く)。にもかかわらず、なんじゃあの話は…、と思っていたわけです。
で、與那覇さんの返信で、たぬきが丸焼きにされます。
重ねてご教示恐縮です、および返信遅れてすみません。よく分からないんですが、「引用RTする=賛意を示す」というローカルルールがあるのですかね。以前、もっと酷い誤解に基づく絡み方をされたこともあって…RT @kaikaji たぬき氏の批判も主眼はブログ記事の内容に向けられていたものと
— 與那覇潤(Yonaha Jun)さん (@jyonaha) 4月 13, 2012
たぬきにもわかりません。RTとか以前に、別に與那覇さんと池田さんとビン・ウォンをまとめていたわけでもないんですけど…。まあ、適当な書き方だったからな、としょんぼりしました。
で、池田信夫さん登場。
Rosenthal-Wongは「中国のインフラが欧州より整備されていた」と書いています。比較の問題。 RT @jyonaha: @ikedanob さんの記述もインフラ整備を明清のこととは書いてないのでは。> @kaikaji
— 池田信夫さん (@ikedanob) 4月 11, 2012
私が引用しているRosenthal-Wongも読まないでごちゃごちゃいうな。 RT @kaikaji: @jyonaha 丁寧なご返答ありがとうございます。TWにあれこれ突っ込まれても、というのはご尤もと思います。ただ、繰り返しになりますが問題は池田氏のあのブログ記事です。
— 池田信夫さん (@ikedanob) 4月 13, 2012
さらに與那覇さんから追加のたぬきへの焼きが入ります。
@ikedanob 恐縮です。 @kaikaji 先生は中国経済がご専門なので、 文脈は踏まえられてのご発言かと(自分は恥ずかしながら未読ですが…)。発端のブログ bit.ly/Hugogw は、池田さんの記事がBin Wongに依拠していることを見落としてますが…
— 與那覇潤(Yonaha Jun)さん (@jyonaha) 4月 13, 2012
すいません…。
ここから、梶谷先生VS池田信夫さんになります。
@ikedanob @jyonaha誤解に基づいて批判した点はお詫びいたします。Rosenthal-Wong(以下R-W)の諸説の骨子は確かに池田さんの要約の通りかと存じます。しかしながらR-Wの描く中国政府と経済発展の関係は、岩井茂樹、足立啓二など日本の優れた研究者によって
— KAJITANI Kaiさん (@kaikaji) 4月 13, 2012
@ikedanob @jyonaha (続き)明らかにされてきた明清期の社会経済のイメージとはかなり隔たりがあるのも事実です。一言でいえばR-Wには「低徴税、郄公共財の中国、郄徴税、低公共財の西洋」という図式を強調するあまり、議論をかなり簡略化している点が見受けられます。
— KAJITANI Kaiさん (@kaikaji) 4月 13, 2012
@ikedanob @jyonaha (続き)例えばR-Wのいう公共財 の中には政府に雇用された役人を通じた公共サービスがかなりの程度含まれていると思いますが、これは明清期の中国では封建社会のような領域内自治が存在しないため、後者であれば民間の手によって提供されたサービスまでも
— KAJITANI Kaiさん (@kaikaji) 4月 13, 2012
@ikedanob @jyonaha (続き)国家財政に依存していたためです。西洋社会で民間が提供していた公共サービスの規模を考慮に入れない限り両者の公共財供給規模の全体的な比較はできないと考えます。 以上のことから、岩井、足立といった日本の研究者の先行研究を踏まえないまま
— KAJITANI Kaiさん (@kaikaji) 4月 13, 2012
@ikedanob @jyonaha (続き)以上のことから、岩井、足立といった日本の研究者の先行研究を踏まえないままR-Wのかなり大胆で単純化された議論を鵜呑みにするのはかなり危険ではないか(それこそウォーラステインの諸説が鵜呑みにされていたことの裏返し)、
— KAJITANI Kaiさん (@kaikaji) 4月 13, 2012
@ikedanob @jyonaha (続き)というのが私の批判の骨子だと理解していただければ幸いです。一連のtweetでは言葉足らずで失礼いたしました。R-Wの議論を広く紹介していただいたことに感謝いたします。
— KAJITANI Kaiさん (@kaikaji) 4月 13, 2012
まあ、これに関して、異存はありません。
で、たぬきが悪い、ということで、話が終わります。
@kaikaji @ikedanob なんだかたぬきさんという方のブログが自分のTWを批判した件から、話をややこしくさせてしまい、重ねて恐縮です。自分は梶谷先生の記事も池田さんの記事もともに普段勉強させていただいておりますので、今後ともどうぞ、色々ご教示くださいませ!
— 與那覇潤(Yonaha Jun)さん (@jyonaha) 4月 13, 2012
まあ、ねえ。発端ですからね。すいません…。
元の本を見なかったのと、Bin Wongの名前を出したのが失敗だったわけで、これは大いに反省してます。Bin Wongといえば、私のなかではWong, R, Bin and Peter Perdue, “Grain Markets and Food Supplies in Eighteenth-century Hunan,”in Rowski and Li, Chinese Histoy in Economic Perspective, Berkeley: University of California Press, 1992なんですが(年がバレる)。これ、こんな細かいコメの動きが提示できるんだ、と結構感動したんですけど。あの作業をした人があんなわきの甘いことを書くとは…、とびっくりしていました。
ともあれ、以上が顛末です。
じゃあ、その問題になった本、
Jean-Laurent Rosenthal, R. Bin Wong, Before and Beyond Divergence: The Politics of Economic Change in China and Europe, Cambridge, Massachusetts, Harvard University Press, 2011.
にはほんとのところ何が書いてあるのよ、というのが最後です。別記事にします。