読書:波多野澄雄『国家と歴史』

国家と歴史 (中公新書)

国家と歴史 (中公新書)

筑波の波多野先生のご著作です。研究科長だったんだけども、めちゃめちゃ仕事が早いという話を聞きました。読んでるとなんだかわかる気がします。

内容的には、前半は戦争をめぐる賠償に関して通覧し、後半は著者が当事者としてかかわった、「戦争」の歴史叙述(特に教科書・靖国問題)に関してつづられています。

すっげえ今更なんですが、なんで政府の公式見解で「先の戦争」という言い方をするのか、やっとわかりました。

いやしかし、あっちを立てればこっちが立たずというか、結局負けたにしても、誰に誰が負けたのかがはっきりしないまま(はっきりさせられない環境のせいもあって)時間ばかりが過ぎて行ってしまったのがよくわかります。

ところで、最近の韓国や中国による個人賠償要求が、日本が経済的に成功したので要求されるし、ある程度対応するべきとあるのですが、これには同意しつつも、最近の日本人は、韓国や中国に対してなんか劣等感というか、昔は歯牙にもかけなかったのに、みたいな感情があるんで、今後はさらにいろいろ難しいでしょうね。

なんだか、日本でいま、中国に対する微妙な感覚が、老若男女問わず(むしろ根拠なく中国にシンパシーを抱いていた“老”“女”の間で)生まれてる中で、この賠償というか、戦争認識はどこに行くんでしょうか。

ところで、9条改憲再軍備というのと、9条による平和主義で、賠償を避けるという政策を志向する層って、内洋は矛盾してるんだけど、重複しそうなのはなぜなんでしょうか。

あ、やっぱり読んだ本に対応して、自分の文体も変わるな。不思議…