読書:松方冬子『オランダ風説書』

オランダ風説書―「鎖国」日本に語られた「世界」 (中公新書)

オランダ風説書―「鎖国」日本に語られた「世界」 (中公新書)

幕府が、長崎当局を通じて、オランダから情報提供をさせていたというもの。
「阿蘭陀風説書」だけじゃなくて、「唐船風説書」もあるわけですが、まあ情報量としてはオランダの方が大きいのです。なんせ、オランダのほうは、幕府に気に入られないと貿易自体がおじゃんになってしまうわけで。唐船の関係者にはこういう懸念はなかったんですかね。まあ、オランダのほうは、東インド会社や国でやってる事業ですんで、そういうのを気にすることができたが、唐船にはそういう契機自体がなかったのかもしれませんが。

とにかく、「鎖国」といっても、当局者はいろいろ仕事をしているわけで。外からやいのやいの言ってもしょうがないんだなあ、と思います。

それにしても、辞書もろくにない状態で、「別段風説書」のオランダ語をだいたい翻訳できるんだから長崎通詞もなかなかやるな。

とにかく、史料の手触りと、当時の現実のリアリティが感じられました。ひとつひとつの「風説書」や資料の文言の意図が、位置づけられていくのは愉しいです。良書。

オランダ風説書と近世日本

オランダ風説書と近世日本

別段風説書が語る19世紀―翻訳と研究

別段風説書が語る19世紀―翻訳と研究