読書:服部龍二『日中歴史認識』

日中歴史認識―「田中上奏文」をめぐる相剋 1927‐2010

日中歴史認識―「田中上奏文」をめぐる相剋 1927‐2010

これは面白かった♪
有名な「田中上奏文」がどのように扱われてきたのかを検討したものです。あんまり、日中間だけの問題でもないような…。そういう意味で、最後のほうはなんだか蛇足な気がするなあ。

個人的には、米国で、頭から「田中上奏文」を信じている人が多かったことが興味深かったです。というか、そんな“悪の組織綱領”みたいなもんあるわけないでしょう。
東京裁判やってる連中も“誰かが糸を引いている”とか“なんちゃらの野望”みたいのがあると思ってるんかなあ。ナチスドイツだって、いろいろ言ってる割には計画性に欠けるわけだしさあ。

それにしても、日本の当局はテキトーにでたらめに動いてるのに、結果として「田中上奏文」の中身通りに日本は動いていくわけですから、まあ、元の著者はすごいっちゃすごいな。これは不思議。というか、むしろ東北でじっと見てればあんな感じで動いていくというのがバレバレだったのだろうか…。

「田中奏摺」がどう扱われたかも面白いのですが、「田中奏摺」の一つ一つの要素が、だれが言い出したものだったのかがわかると面白いなあ。具体的な誰か(もちろん複数)の思想や文章を切り張りしたのか、それとも結構当時の中国東北では一般的な認識を組み合わせたのか…。元ネタを作った人は間違いなく日本通ではなかったのでしょうが、そうであるにもかかわらず、50年以上“使える”ネタを提供したのですから、やっぱりすげえ、と言わざるを得ません。